秩父の散策
ニ子山

西岳  秩父には2つの二子山がある.西部秩父駅からも、その命名の理由が一目でわかるような姿を見ることのできる、秩父入口にある二子山は馴染深いものであろう. もう一方は、群馬県との県境、秩父の最奥部にある二子山である.麓の坂本からみる露出した石灰岩の双峰は荒々しくすばらしい山姿だ. 鞍部の股峠を挟んで鋭く立ち上がる二つの岩峰を写真で見て以来、私はこの山に登る機会を待ち続けてきた.
 先日、この山に出かける気持ちになり、計画を立ててみれば、秩父の最奥地ゆえに、途中バスの乗り継ぎがあったりしてアプローチに少々難があることを除けば、高さもないし、急とはいえ 登山道もつけられているようであって、訪問を消極的にさせる要素はまったくなかった.
 訪れてみれば、山頂からの360度の視界には、秩父一帯の山々の姿が入り、日帰りでいける山々の中では、きわだった満足感を得られる山に思う.
西岳の岩峰
二子山
登山口からみた二子山.切れ込んだ俣峠を挟んで左右に岩の峰が続く姿は壮観.
西岳
東岳の途中から見上げると鋭い西岳の岩峰がそそり立っている.
頂上
三角点のある頂上は峠からそそり立つ岩より少し西側にある.
 西武秩父駅を降りる客は多かった.改札をで、駅前の1番バス乗場に向かう.9時10分発小鹿野行きバスは40分で小鹿野役場前に着いた. ここで10時ちょうどに来る坂本行きに乗り換える.バスの走る国道299号は、これから向かう坂本集落を最後に県境、志賀坂峠を超え、群馬県上野村に向かう.
 これから登る二子山もほぼこの県境に位置している山である.行政として引かれた線は、山頂の三角点より少し西側を通っているので、実際には群馬側の土地を 踏むことはなさそうであるのだが.奥秩父という山域をみれば、山梨県から長野県にまたがるとても広い範囲を秩父は指し示しているのであるが、住む人々の生活圏からみれば、この山は 秩父の最奥に位置していることになるのだろう.
 バスは赤平川に沿って登っていく.整備の進んだ国道から、集落のある旧道に入れば河床スレスレを走るような狭い道路であった.使われなくなったつり橋が道路の上で川を渡っていて、 高いところを新道が橋で超えている.その新道に戻れば、巨大な電力の開閉所が現れ、山間をいききしている高圧線がここに収束してくる. 大都市東京に電力を供給する背骨としても秩父の山々は使われている.その背骨を支えている石灰岩のほうも都市を作るために消費されていったのである.
 蛇行する川の幅は先ほどの場所よりいくらか広がってきた.納宮からは、両神山への登山コースがあるのだが、バスを降りる人はいなかった. 集中豪雨によって登山道は通行止めと、バス停脇に書かれていた.前方には特徴的な山容の双峰だけに一目でそれと確認できる二子山が見えてきた.
 荒川の一源流をさかのぼるバス旅も、30分で終わり、終点坂本についた.登山道に繋がるコンクリートの車道を登っていく.一軒屋でこの車道は終わり、歩道に変わった. 沢に沿って登っていく植林中の平凡な歩道であるが、木立の天井にはこれから登る白っぽい峰が見えている. 国道299号に出る、登人という民宿のすぐ先で分かれている林道に入ると、この山の概要図があって、その先に登山道の入口がある. この図によれば、高い方の西峰は標高1165m.鞍部という言葉にピッタリの形をした股峠まで、ここから70分の道のりである.
 バス停のところから登ってきた沢筋に再び出ると、さっそく道が崩壊している.埋める石は白っぽい沢、おりて迂回した.水流をニ分する二股に出た. 右側の北に向かっていく沢に沿って道は続いている.沢に平行して登っていくから、私が登らなければならない勾配も水の下るものと同じになるから急だ. 所々で歩道は崩壊していて、沢に降りる.沢は再度二つに分かれている.ここでは左側に進む.沢もだいぶ詰まってきた感じで、峠は近づきスイッチバックしながらの急な登りを終えると 峠であった.
 風が通って涼しい.上の方から、岩峰を登る人たちの合図の声が聞えている.左右には西東2つの峰に向かう道が分かれ、直進は群馬県側の倉尾におりていく道である.  私はまず東峰側に少しだけ登り、峠からそそりたつ西峰の岩を眺めることにした.急傾斜の斜面を木に頼りながら登っていくと、樹林の切れたあたりに少しだけ広くなった平らな場所があった. 慎重に岩を乗り越えながら先端まで伝っていくと、もう前には何も邪魔するものはなくなる.足元を見れば、今立っている岩は峠まで切れ落ちていた.
 高い紡錘形の岩が峠をはさんだ向かいにそびえたっている.ここでちょうど正午だったので、昼食を作りながら風景を楽しむことにした. 南側に目をやると、両神山の一帯のピーク群が対座しているのであるが、どこが山頂なのか判別できない.つづら折に登っていく車道が右の端に見えているからここの上が八丁峠であろう.
 昼食をすませると峠に降り、こんどは西峰に登る.すぐ上級者コースとの分岐があらわれる.このコースは岩場を登っていくようなので、迷わず右を進んだ.小刻みにスイッチバックし ながら登っていくと、突然続きがなくなった.たよりの赤ペンキの印にしたがって岩を這い上ると稜線に出る.三角点のある山頂は細い岩尾根の上を少し西に行ったところにあるはずだが、 まずは展望のよさそうな岩の上に立つことにした.踏みあとにそってホールドを頼りによじ登ると、絶景が待っていた.
股峠
東岳と西岳の鞍部、股峠
先ほど食事をとっていた場所はかなり下に見えている.その奥には東峰のピークと白石山がひかえ、さらにだいぶ先には明らかに武甲山とわかるとがった姿を見ることができる.
 三角点のある頂上に立つと、岩を登ってくるパーティの姿が見える.登り終えた達成感を考えると一回やってみたい気もするが足が震えそうだ.西を見ると姿を失った叶山が見える.平らに削り取られた四角いスペースは風化していない 石灰岩のため純白である.
 頂上からさらに西に向かうとある魚尾道峠に降りるルートを行こうか迷ったのであるが、これから東京まで戻ることを考えると、4時30分のバスに乗れるように下らなければならない.こちらのルートは次の機会に残しておいて、時間の確実な 往路をもどることにする.股峠までは慎重に降りざるをえないので時間はかかったが、そこから先は一気下り、60分で林道に出た.
展望
坂本集落を見下ろす 両神山方面
登ってきた坂本集落を見下ろす.南向かいの両神山は複雑にピークが並んでいる.
西岳から東側の展望 叶山
手前の岩峰は東岳、その先が白石山.背後のかすんだ稜線でとがったピークが秩父を代表する武甲山. 西峰の岩稜の先には魚尾峠があり、さらに先に石灰岩の採石で頂上の削り取られた叶山が見えていた.
地図
地形図:万場(五万分の一).LINK国土地理院地図閲覧サービス
二子山を、Yahoo地図情報でみる.
交通機関
西武秩父線西武秩父駅下車.西武バスで小鹿野町役場前まで行き、ここで坂本行きに乗り換え.終点坂本で下車.
LINK西武鉄道 
コースタイム
西武秩父駅 40分(バス) 小鹿野役場前 time35分(バス) 坂本 15分 林道入口 20 沢が分かれる 20分 ローソク岩分岐 5分 股峠 5分 上級者コース分岐 30分 岩峰の分岐 5分 頂上 25分 股峠 30分 林道入口 15分 バス停
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