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主脈縦走
宮ケ瀬 ブナの木(東海自然歩道姫次で)
宮ケ瀬の朝
大きなブナの木が立つ姫次.ここには東海自然歩道最高点の案内がある.訪れたのは新緑の季節、ブナは芽を吹き鮮やかな緑に包まれていた.
 地形図に出てくる丹沢山は1567mのピークであるが、この峰の南北に位置する蛭ヶ岳、塔ノ岳を含めて丹沢山と呼ぶこともあるようだ. 深田久弥は「百名山の一つに丹沢山(丹沢山というのは山塊中の一峰である)を取り上げたのは、個々の峰ではなく」とことわっているが、沢から突き あげる円錐形の峰ひとつでは容姿も単純でいくらか貧相な感じさえする.
 それらをいくつも連ね合わせて歩いたときはじめて、山塊ということばのよく当てはまる丹沢を歩く魅力が現れるのかもしれない. 縦横不規則に並んだ峰々、その間を仕切る深い谷すべてが丹沢なのだと私はずっと思っていたのだが、丹沢にも主稜があるのである.
 地図を追っていくと矢櫃峠から表尾根は塔ノ岳に続き、さらに大群山に向けて峰々は西北に一直線に並んでいる. もし、これにブナの丸など西端の山々を追加すると加入道山から西南に折り返し、全体では富士の形のように峰々は並んでいる. 本当は、主稜は直線をえがくのでなく、富士に宝永山の稜線が乗っているように、丹沢の鳥瞰図でも北西の中津川側に出っ張り となっている部分がある.
 この表側からみた凸部分には丹沢の主峰ともいえる蛭ヶ岳と、丹沢山がある.海抜1673メートル、山塊中最高峰である. さらに広げて、この一帯で高いピークを探せば海抜1683メートルの御正体山が北側にあるのであるが、道志川を越えているから 道志山塊として、登山者は分けて考えている.
 表口ともいえる塔ノ岳から進むとすれば、起点大倉まではバスの便も良い.しかし、表丹沢でもっともにぎやかなルートを 人ごみにまみれ、木段で整備された歩道をあくせく登っていくのは少しまいってしまいそうだから、こっそり北の裏口から入ることに決めたのである. 歩く距離から考えれば日帰りできるであろうが、北側から入ると公共交通機関のアプローチが良くなくなるから、東海自然歩道沿いの黍殻山 にある避難小屋で一泊し、翌日余裕をもって縦走をする計画を立てた.
一日目
 スタートはJR橋本駅、道志行きバスの出ている三ケ木に向かうバスに乗る.道志のバスは少ないから、 三ケ木のバスターミナルでバスを待つことになった.土曜日の午後、待っているのは学生で、バスが出ていくたびに減っていき、 道志に帰る学生だけになった.
 焼山登山口でバスを降りる.東海自然歩道の入口は、次のバス停西々野であったことに降りてから気づいた. ここは、西沢にそった歩道の入口なのであって、東海自然歩道にはひとバス停分歩かなければならなくなった.
 合流していくのだから、こちらの道から登ってもよいのだが、予定通り東海自然歩道入口まで歩き、消防団の小屋の横を入る.車道を登っていくと、鹿の侵入をふせぐためだろうか、金網の張ったドアをあけて入るようになっていて、その先で歩道は始まっている.
 登り始めはきついけれど、焼山から先は稜線上を辿るだけで平らだから、本日の行動は2時間といったところだ. 後の予定は小屋に泊まるだけだから、今日はずいぶん気楽な山歩きである.自然歩道だけあって路はさすがによく整っている. 焼山は1059m、歩道入り口は350メートルで標高差700メートルの登りを一気にやり過ごした.
 山頂の手前には白樺の木が並んでいた.焼山の歩道を開いた記念に植樹したと書かれている. 三方の集落の境界になっていたことから3つの祠が建っていると書かれていたが、私には2つしか見つからない.
 展望用の鉄塔が建っていて登ると、空はどんより曇り、その下には宮ケ瀬湖が見えている. そこから尾根を追っていくと、地形図では東峰、中峰、西峰とある三峰のピークが並んでいる.登山用地図では、 そこに発する沢の名にしたがって本間 塩山木、太礼の頭と書かれていて、宮ヶ瀬から丹沢山に歩道が通っている.
 次の黍殻山は、三角点も設置されているのであるが、東海自然歩道を歩いていくとそのまま脇を通り越し てしまうピークである.山頂に立ち寄るには、道標にしたがって歩道左のスズタケの中を這い上がり、細い踏み跡を 辿っていく.金網で囲まれた雨量観測用設備とアンテナが建っていて、その柵のすぐ脇に、 ここが山頂1273メートルであることを示す三角点も設置されていた.
 特徴のないつまらないピークであるから、無視されるのも無理はないと思いながら歩き始めたけれど、 翌日、蛭ケ岳からみたこの山は、稜線上のはっきり確認できるポイントであって、登っておいてよかったと 思うことになった.実際にそこに立った経験があれば、遠望したときにも親しみもわくものだ. そして後々その姿を忘れることもない.山頂はできるだけ踏んでおくものである.
 自然歩道への下り道もはっきりしなく、斜面をすべり降りるようにして歩道の上に出た. 左手に歩道が分かれていて、早戸川が、蛭ケ岳に向かうべく向きを南に変えるあたりの大平へ むかっている. 沢沿いの道なのであろうか、蛭とマムシについて注意書きがあった.
 すぐその先には、避難小屋の表示もあり、歩道から左手の広い草地の中へ降りると白い頑丈そうな小屋が建っていた.
焼山
焼山白樺 頂上 焼山山頂から
白樺の木が並ぶ山頂付近.地元の同志が植えたことが碑に書かれている.
山頂には展望用のやぐらが建つ.風がつよく上に建つのはかなり怖い.北は道志の谷ぞいの集落(写真右)、南東には丹沢山から、 宮ヶ瀬湖の北岸に向けて続く尾根丹沢三ツ峰が見えていた.
黍殻山
平丸分岐 黍殻山山頂 三角点
カラマツが現れると平丸の分岐に出る.
黍殻山の山頂には雨量計があり、その柵の横に1272.8mの三角点標石が埋まっている.
黍殻避難小屋 本間・円山木の頭 宮ヶ瀬
黍殻の避難小屋は歩道左下にある.歩道から下っていくと、広々とした草原があり、その脇に白い小屋が建っていた. 小屋には20人ほどが泊まることができる.
小屋を出て姫次に向かう.谷側の展望が利くところからは、三峰が見えている.
宮ヶ瀬の朝焼け
蛭ヶ岳 姫次
姫次の先の分岐からの展望:左前方の檜洞丸.写真左は蛭ケ岳.

ニ日目
 小屋を出発し、ゆるい坂を登っていくと八丁坂あたりで日の出になった. 笹の切れ目から宮ケ瀬ダムが見えている.歩道脇のブナは芽を吹き、新緑に染まっている.東海自然歩道中、最高所を越え姫次の 先で東海自然歩道から分かれる.
 分岐点はベンチのある休憩所になっていて、見晴らしがよい. 前方の檜洞丸の脇には富士が顔を出している.右手の大室山は道志から山塊内部に深く入り込んだ神ノ川にはさまれて、この山だけ山間に浮いている感じだ. 左手には、これから向かう蛭ヶ岳が釣鐘型にそびえる.展望に気をとられていると、なにやら足もとに動く気配がする.あわてて目をやると、イタチだろうか、草むらに 逃げ込んでいくところだった.
 ここから、東海自然歩道を離れ、蛭ケ岳に向かう.しばらくは静かな林中の歩道、そして後半は急坂の連続になった.適度に疲れた蛭ケ岳手前の登りはきつく感じるが、 ここは木段の工事がなされている最中であった.次に来るときには、大倉尾根の塔ノ岳へのつめのところのような登りになっているのかもしれない.
 頂には蛭ケ岳山荘がある.登りかけの時見上げたこの小屋は、盛り上がった土塊のてっぺんにかろうじて乗かっている感じだった. 西側の稜線は急に高度を落としその先に、檜洞丸がそびえている. 玄倉川の覗きこむと、白っぽい石の敷き詰められた河原は、近くにあるかのごとくはっきりその全容を見せているのである. はるか下にある谷底が、山頂からここまで良く見えるのは丹沢の谷の特徴だろう.奥多摩などでは、木々に覆われた谷に水の流れを辿れるようなことはない.

 主脈を縦走していくこlこからのルートは、丹沢山を中継点に「く」の字型に玄倉川の奥壁の上をつたっていく.釣鐘型の土くれの間にかけられた渡り廊下のような 細い稜線が続いているのが見えている.
 丹沢山に向け出発する.ここから丹沢山まで山塊中の高い峰々が連なっている. 最初は鬼ケ岩の頭、続いて棚沢の頭、ここで左に折れていき次の1614メートル、不動ノ峰は蛭ケ岳に続く山塊中第二位の高さである. 下りに転じ、再び登り直すと丹沢山の山頂につく.すでに予定の大半を終えたような気になっていたが、まだ行程の半分に達したところである. 昼近くになって気温は上がりはじめ、そろそろ暑さを感じるようになっていた.開放感とともにみやま山荘で購入した冷たいビールを飲み干して から、塔ノ岳に進むことにした.
 ここから先は、ひたすら歩きまくった感じだ.尊仏山荘が山頂にのっている塔ノ岳は次第に近づいてくる.もう下りに入った気でいたが、塔の岳には登らなければ ならない.飛ばしてきたから、この登りは少しきつかったが、それを終え尊仏山荘の横に出た.
富士の方角にむけ、雛壇の作られた山頂は、昼時でもあって込み合っていた.丹沢でも表側に達し、にぎやかになったのだ. 西下には玄倉川鍋割沢の沢床が白く、水の流れはまぶしく輝いている.昼食をすませ、大倉尾根を駆けおりることにした.
地蔵平 大室山 檜洞丸
地蔵平
大室山
檜洞丸
蛭ガ岳 蛭ガ岳山荘
もっこり盛り上がった峰をつめる登路は結構きつく感じる.ちょうどこの登りには木段整備の工事が進行中であった. 丹沢はいたるところで歩道整備が急ピッチで進められているようだ. 次に来たときには、この山も木段を登っていくようになっているだろうか. 蛭ガ岳山頂は1673メートル.山頂は比較的広く、北東部に蛭ガ岳山荘が建つ.
黍殻山 円山木の頭方面 丹沢山
山荘の東側に廻ると、早戸川流域が見下ろせる.谷左側に続いている山々(写真左)が、東海自然歩道の通る焼山、黍殻山.谷の右に見える(写真右)のは丹沢三峰のピーク.
早戸川、玄倉川にはさまれ、まるで渡り廊下のように丹沢山に向う尾根上の歩道が続いている.
山頂の展望 玄倉川 蛭ケ岳を鬼ヶ岩からみる
山頂のすぐ下から見返す.正面に写真では薄くてはっきりしないが富士がそびえる.
玄倉川の谷
鬼ヶ岩から見返す、蛭ケ岳.
不動の峰
丹沢山への稜線が東に折れるところが棚沢の頭、その先には不動の峰あたりまで海抜1600メートルを維持している.
丹沢山山頂 三角点
丹沢山山頂
丹沢山の三角点.近々航空写真の撮影を行うようで、三角点の廻りには目印のために板が張られていた.
丹沢山 塔ノ岳山頂手前からみた蛭ヶ岳
丹沢の山では歩道の整備が進んでいる.
塔ノ岳山頂手前からみた蛭ヶ岳

塔ノ岳
塔ノ岳
塔ノ岳 てっぺんに尊仏山荘が乗っかっているのがここからも見えている.
塔ノ岳 塔ノ岳
西にむかって階段状に休息所が作られている塔ノ岳の山頂は休日でもあり、さすがに混みあっていた. 蛭ヶ岳以後ずっと巻きつづけてきた玄倉川の大きな谷をここから見下ろせる.
訪問のために


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