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山頂部 赤石岳
北沢の源頭部と赤石岳山頂. 富士見平を出発するとまもなくあたりは明るくなり、赤く染まった山頂部を見ることができた. ここからだと南東のピークが大きく目立つが、三角点のあるのは写真中央右にあるピークである.
 私の手元には二色刷り二万五千分一地形図が何枚かある。 最近は見かけなくなったけれど、私が高校のころは、少し辺鄙な地のものは水線が水色のほかは、すべて黒一色で刷られた二色刷が売られていた。 昭和47年に発行された赤石岳もそんな一枚である。
 私の生まれ故郷は静岡県焼津市である。赤石岳とは50キロメートル以上も離れ、アルプスと呼ばれる山々とはまったく縁のない港町で育った のであるが、冬、天気の良い日、学校帰りに田んぼの脇に立つと北の方に白い峰々が連なっているのを見ることができた。
 温暖な静岡県でも、とりわけ中部地区はそうであるようだ。私の田舎では雪の降るのは、年1回もあるかどうかのたいへんまれにやってくる出来事となる。 子供のころ、雪の降った日の思い出というものはすべて覚えているといえるほど非日常的な記憶である。
 そんな町で暮らしていた私にとって、雪が積もり白くなった頂というのがまったく想像のつかない世界であった。そのあたりが赤石と呼ばれていることは 親から聞いたのであろうか、かなり早くから知っていた。しかし、それがその中の峰のひとつを示すことを知ったのはかなり後のことである。まだ私にとっては、 南アルプスの山々が赤石であった。
 いつのことだったか、町の本屋で地形図というものを売っていることを知って、まずは五万分の一の静岡を買ったはずだ。 そして、それに続く図を次々に買い足し、自分が出かけられるような行動圏の図は一通りそろっていった。
 町の本屋に売っている図の種類は限りがあっただろうから、静岡市の大きな書店に出かけるようになってから本格的に集まり始めたはずだ。 書店で、地図を入れた木製の引き出しの中から目的の一枚を探り出すだけでも、そのたび新しい土地を知っていくようで、私の好奇心を十分に満たしてくれた。
 一、二枚づつ買い足していき、縮尺も二万五千分の一を集め始めたから、静岡県中部のものだけでもかなりの枚数になっていった。 大井川筋を序々に北進していったある日、地形図は色のないものに変わった。このとき購入した図には、図名にもなっている赤石岳という3120メートルのピークがあ ることを、はじめて確認した。
 今思えば、このときすでに、このくらいの山に登れる年齢であったのであるが、そのころの私にとっては一生登ることはない山と考えていた。雪の積もった山、本でみたことの あるヒマラヤやアルプスの山々と重なって、それは命がけで登るものであると思えたからである。  このときの印象がずっと後まで頭にこびりついていたようで、少しくらいきつい山であっても身じろぎすることもなくなった、最近でもこの山域にははいっていなかった。 身近なところにありながら登ることに、怖ささえ感じて避けてきていたのである。
 今年、私としてはよく山に通った。いよいよ山にはまったと自分でも思える半年をすごし、ふるさとの山にあまり登っていないこと気づいたのである。ここで調子にまかせて登 っておかないと、またしても今後出かけることはなくなりそうな思いに押されて、ついにこの山に登る予定を立てることになった。  いざ行くとなるとルートが全然わからない。ガイドブックを買い、調べていくと、まず交通手段が良くないことに気づく。首都圏から出向くとなると登山口に着くまでに一日を要してしまう 。せっかく3000メートルもの高度を稼ぐのなら、縦走をしようと思っていたが、3日間ではこの山だけで戻るのが精一杯という感じがする。静岡にいる間に登っておくべきだったのだ。
 今回は友人を誘い、私としては珍しく二人で登ることにした。朝落ち合って東名高速を静岡に向かうことになった.静岡インターを降りる と、そこは地図を見なくても私の知り尽くしている場所である。学生時代は高速バスで行き来して以来、見ていない光景かもしれない。時間の過ぎるのは速いと思うようになったけれど、 近年はこのとき使う時間の単位が年になってしまった。この間、細部は変っても、道筋は変っていない.私の頭の中の二万五千分の一の地図を動員してすぐに道は見つかる. 町中に入り、梅ケ島に向かう街道に入った。実はこのあたりは近年も何回かバスで通っているから、それほど記憶に間があいていないのであるけれど、 都合よく、コンビニができていたりして、食料を調達するために立ち寄った。
 井川に向かう玉機橋を渡ると、いよいよ山間部に入ったと感じる。富士見峠を越えた、静岡市井川は大井川の流れに沿ってある。大井川最奥の集落も、川沿いに登れば、 接阻峡に阻まれて、下流の川根側とは孤立している。この集落がダムに沈んだときにできた大井川鉄道の井川線はこの両者をつなげているけれど、 今ではどちらかといえば観光用であって、道路は静岡市を起点にこの富士見峠を越えているから、人の動きも峠を越えていく。
峠を下り、大井川を跨ぐ橋の代わりにもなっているダムの上に出る。すぐに井川駅、考えてみれば、ダムの建設資材運搬用につくったのであるから、ダムの脇にあって 当然であるが、駅と集落は少し離れている。
 この井川はずいぶん奥にあるのであるが、南北やたらと長い静岡市の中では、まだその長軸の半分の位置にある。これから登る赤石岳もある、これ以北の大井川筋の山々はすべて静岡市内にある。 県庁所在地となっている市内に3000メートルの高峰が並んでいるのも珍しいことだろう。ちなみに静岡市の最高地点は、この赤石岳にはなく、国内で第4位3189メートルの間ノ岳の山頂にあるので ある。四位とはいっても、奥穂高岳3190m、北岳3192とほとんど差もなしに順位を競っている山だ。
 山に登るなら、こんなすごい持ち駒まであったのだから、もっと早くから利用すればよかったと私は後悔さえした。  井川の集落は大きな集落で驚いた。ここから畑薙までは山間に道路が続いているだけである。送迎バスの時刻が近づいているから 友人は車を飛ばした。高速で渋滞に会った時、半分あきらめていたけれど、そのあとは考えていたより順調に進んだので、間に合うかどうかの瀬戸際といった 感じである。結果は敗北、数分の差でバスは出発した後であった。畑薙ダムの上に車を止めやむなく歩きはじめた。夏山の季節だけに入山者も多いのだろう。 天幕を張り、机の上には入山カードがおかれているがだれもいなかった。バスの出発とともに 引き上げていったのであろう。磨り減った鉛筆で書き込み、舞わないように石をのせて置き去る。
 五時間もかかった、林道歩きはさほど苦にはならないけれど、今日は私一人ではないからためらう。 明日のバスを待つのもひとつの方法だけれど、登り初めてから時間が不足するほうがかえってきついから、行けるところまで歩いておくことにした。 なかなかダム湖は消えてくれない。まだまだ先は長いようだ。日は暮れ漆黒のなかを歩いていると雨まで降り出した。次は稲光がまるで目の前に落ちたかと思えるほど明るく光りだした。
 このあたりの載っている地形図をもってこなかったことは失敗であった。林道を歩いていけば道に迷うことはないのだから、時間さえ過ぎれば目的地に着くことができるのであるけれど、 今どのあたりまで到達しているのか確認できないのは不安を増す。もっとも、私が所有する古い地形図では赤石発電所や赤石ダムのようなポイントは確認できないことだけは確かだ。
 七時三十分、赤石ダムのトンネルを越えた。少しペースがあがっていった。もう残りわずかになったような気がしたからである。しかし、実際はここから先まだ一時間を要したのである。 牛首峠の看板をみてやっとひと安心、右手下の方にぼやっとあかりが見えてくる。降り口を探して分岐を降りていくと小屋の前に出た。
椹島小屋と登山道入口
椹島小屋 登山口
赤石小屋
赤石小屋 シラビソ
赤石小屋は、小赤石尾根に建つ.初日にここまで登り、翌日山頂を往復してさわら島まで下山するのが標準的な行程であろう. まだ標高が しかなく、山頂までは3時間ほどを要するから、眺望を楽しむには早朝出発が必要である.小屋はシラビソに囲まれ、南側の展望にも優れていて大変快適.
富士見平
夜明け 富士見平で夜明を迎えた.名の通り、富士の眺望に優れ、ほかにも北には荒川三山、東には笊ヶ岳と展望を楽しむことができる. 写真でも雲の間に富士の姿を確認できる.
赤石北沢源頭
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山頂
三角点 這松
赤石岳の山頂を示すのは、最も高い場所に設置された一等三角点の標石.
百間平
百間平
小赤石尾根
小赤石岳
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地形図:赤石岳(2.5万分の1)国土地理院地図閲覧サービス
赤石岳を、 Yahoo地図情報でみる.
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    赤石岳非難小屋
    赤石岳避難小屋
    <宿泊> 縦走せずに、山頂とを往復するとしたら次の3つの小屋のいずれかを利用することになる. 椹島ロッジ:登山道の始まる椹島にある.食事着きのロッジと素泊まり専用の登山小屋がある. 赤石小屋:この小屋があるのは登山道を約半分登った場所.ここで泊まり、翌日山頂に往復し下山するのが一般的なようだ. 素泊まり客にはすぐ下にある旧小屋が使われている. 赤石非難小屋:山頂直下にあって素泊のみ.静岡市内から椹島までのアプローチを含めると一日でここまで達するのは少し 難しいだろうから、椹島で一泊しなければならないだろう.開設期間は限られているので、確認する必要があるだろう. 椹島と赤石小屋にはキャンプ地も併設されているから、テント泊ではこのどちらかを利用する.  これらの小屋の連絡先は、いずれも東海フォレストサービス(Phone0547-46-4717).

    <交通機関> 静岡市内からは、畑薙第一ダム行きのバスを利用する.一日3往復.3時間半かかる. 通年運行ではないので確認が必要.問い合わせ先は静岡鉄道(Phone 054-2520-0505)
     畑薙ダムから椹島には、東海フォレストサービスによる送迎バスがある.夏場のみの運行である点と、同社の経営する小屋の宿泊者 であることが利用する条件になる.素泊やキャンプ場の利用では乗れないので注意.畑薙ダムから椹島間は林道であるので歩行は 容易であるが、距離はやたらと長い.私は送迎バスの時刻に間に合わなくて、暗くなった林道を友人と二人で歩いたが、5時間弱かかった. 送迎バスの時刻、期間、利用条件については東海フォレストサービス(Phone0547-46-4717)に確認しておいたほうがよいと思う.

    赤石岳北沢より (荒川三山と赤石縦走のページ) akaisi
    北沢よりみた赤石岳. 荒川三山縦走のページより 金峰山よりみた、南アルプス南部の峰々.写真中央左の三角形が聖岳で、そのすぐ右側のピークが 赤石岳.


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