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袋田の滝
袋田の滝
 いったい、どのような経緯でいつ選定されたのか、私は知らないのであるが、日本三名瀑なるものがある. 残念ながら3つとも優れたものがそろうとは限らないのは、他の名何々と変わらない.それは、銅メダルがそうであるように、 トップとそれに敗れたものは対になっていても、三番手はその他多数の筆頭ぐらいにしか人々の記憶には残ることができないようだ.
 まさか三名瀑の中には順位は設定されていないのであろうが、133メートルと国内最高の直瀑である那智の滝を、 一位とすることにだれも異論はないだろう.第二位は華厳の滝となる.97メートルを直下するこの滝の美しさは、この滝がたとえ国 際的な観光地である日光になかったとしても選定されていたように思う.
 そして問題の三番目はどこなのか.いくつもある落差100メートル程度の滝の候補のなかで、袋田の滝とい うものがその栄誉を与えられていることを知ったのは、この滝を訪れた直前のことであったように覚えている. 観光ガイドのどこかに三名瀑のことが書かれていたのだと思う.けれどどこにその滝があるのかはまったく見 当がつかなかった.今なら名称がわかればWebでサーチして、すぐにでもそこに行くことができる. たった11年前、このような方法が近い将来普及することさえ想像できなかった.書店で何冊もガイドブックを立ち読みし、 茨城県の久慈という場所にあることをつきとめた.家に戻って、時刻表を辿っていくと水郡線に袋田という駅があるのを見つけ た.この駅で降りれば、滝にいくことのできる可能性が高い.地図すら手に入れずに出発したように思う.必ず購入する地形 図もこのときは入手していない.バスも出ていそうであったし、大きな観光地の一角にあると想像していたから、いけばどうに かなると考えそのまま出かけたのだろう.
 1989年、那智の滝を訪れた1週間後の9月8日に私はこの滝を訪れている.大学の夏休みの終わりも近づき、日の沈むの が日に日に短くなっていくことをさびしく感じる時期である.各駅停車で行ったとしても、この滝を見ただけでは、時間があま ることから、常磐線の平を経由して郡山に出ることにした.ここから水郡線を水戸方面に向かう.郡山を出た時点でもう午後にな っていたから、袋田駅に着いたのは3時半ばであった.たぶんバスの時刻はあわなかったのだろう.駅から30分かけて滝まで 歩いている.どこにでもありそうな畑の脇に滝の入り口がある感じだった、ここで100円を払ってトンネルに入る.コンクリートに 囲まれた観瀑台に出ると、まるで水族館の水槽をみるているように、コンクリートの枠越しに滝を見学することができた.
 視界が制限されているからだろうか.なんともこじんまりした感じで、どうしても100メートルある大瀑には見えない.滝が4段 に分かれているのも、その理由かもしれない.そして那智、華厳いずれも垂直に落下するからこそ迫力がある. 垂水といわれる滝、落水の傾斜は、滝の格を決める重要な要素であることをこの滝を見て知った.
 見学を終え、暗くなりかけた車道をとぼとぼ駅まで下っていく.半分裏切られた感もあったが、不満であったかというとそうで ない.道脇には畑仕事を終えようと片付けている人々が立ち、家路を急ぐ自動車が走っていく.平穏な山村の夕暮れ時.歩き ながら、いろいろな場面にでくわすからことは楽しい.
 思えばこれまで滝に心から感動したことは、ほとんどないだろう.滝を見にいくというのは、私の旅を始める口実に過ぎない. いつでも、それに至る過程を楽しむべく滝に向かっているのである.
 ホームのベンチに腰かけ、帰りの列車のくるのを待つ.暗いレールの上を赤いディーゼルカーが入線してきた.もう日も沈んで しまい、電車の車内だけが異様に明るく感じた.ディーゼルカーは音をたて走り出す.水戸駅に着くと、ホームには学生が列を作ってい た.折り返しでこれから帰宅するのだろう.
 旅に明け暮れ長かったこの年の夏休みは、この翌日終わった.

2001年2月執筆

 最近、木暮理太郎の「山の憶い出」の中の、四十年前の袋田の滝という文を読んだ.著者は、 1936年、この四十年前の旅を懐古している.
 明冶の中期、このあたりの山村の姿が少しだけだけれど見えてきて貴重だ.前日、下君田という山村で一泊10銭 で泊まった宿では、夕食には炒った蝗が山盛りなっていたし、夜喧嘩の声に目を覚ますと、そこでは賭博が開 かれていたりする.
 滝を見た後、太子まで宿はなく、地元の若者に案内されて、まだできたばかりの料理屋に泊めてもらうことにな る.田の中に新築された家で、湧き出るた湯をひいてあったようであるが、これが、現在の袋田の温泉であるようだ.
Information
<On the Web> 大子町観光商工科
お国自慢(旅のこころ) には、日本三大何々がかき集められていて面白い。


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