多摩川水源部縦走 navigation_arrows top next previous
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笠取山
 多摩川の源頭が突き上げる笠取山、西側からは形よく、ひときわ目立つピークだ.雁峠に立つと、前方に現れるコニックな笠取山の姿に狂喜することだろう.
 東京の川、多摩川は、山梨県塩山市北方にある笠取山に始まり、全長138kmの流路を辿り東京湾に注いでいる. 水干と名づけられたその水源は笠取山頂の南直下にあり、ここに湧き出た水は深い谷の底を流れくだり、あたりの水を集めて一之瀬川となる.流れは丹波川と名を変えた後、さらに多摩川となる. 丹波川集水域にある山々は、ときに多摩川水源部の山々と呼ばれ、縦走による山行の対象だ.この山域西の入口となるのは雁峠で、そこから東京都の最西端に位置する雲取山にかけて、ほぼ稜線を伝うように つけられた縦走路は、全長約18kmあり、コース中間の将監峠に小屋があるから、ここを中継点として1泊2日でこのコースは歩かれるのが普通のようである.
 この山域の主峰としては、将監峠の西にある多摩川水系、最高峰の唐松尾山(2109m)があげられるが、山頂は樹林に囲まれていて展望はないから、三角点をみて最高峰に到達したことを満足するしかない. 山頂より東、峠よりには西御殿岩があり、こちらは広大な水源域の全貌を見下ろすことができる展望台となっている.飛龍山、雲取山、和名倉山などこの付近の山だけでなく、西には黒金山や国師岳、南には大菩薩嶺、 その先には富士山と、ここに立つとすばらしい眺望が待ちうけている.天気がよければ、ぜひ立ち寄っていきたい縦走路の要である.

唐松 雁峠
黒金山 Kurogane
左上:林道の廻りには、芽吹いたばかりのカラマツ.左下:西南西には黒金山から乾徳山にかけての稜線が見える.上:雁峠.北北東の斜面についた急坂は、古礼、水晶を経て雁坂峠に 向かう登山道.
ピークから見下ろす fireline 笠取山山頂 summit
水晶山方面 suisyoyama
きわだつ笠取山山頂の眺望.上:防火帯と水源管理道が走る. 右下:北西の水晶山の方角の展望.右上:笠取山の標高は1953m.山頂を示す標柱は防火帯上のピークの東側に隠れてある.眺望のよさに目を奪われて こちらの真の頂までいかない登山者も多いのではないだろうか.
水干 Mizuhi
水の干上がるところ、水干(ミズヒ)は笠取山山頂の南直下にある.ここが多摩川の水源とされている場所であり、水神社が祭られている. ここに落ちた一滴は全長138kmにおよぶ長旅の末東京湾に注ぐ.
唐松尾山 Karamatuoyama
黒エンジュの頭との鞍部からみた唐松尾山
唐松尾山山頂 summit 三角点 sankakuten
唐松尾山山頂は取り巻く木々に視界をさえぎられた地味なピークであるが、海抜2109.2メートルあり、多摩川水系では最高峰.
和名倉山
和名倉山.
西御殿岩 Goteniwa 仙波 Senba
西御殿岩.唐松尾山東に位置する展望に優れたピーク.山頂に立つと、間近な和名倉山がその全貌をあらわす.
山の神土から和名倉山に続く尾根.仙波、吹上ノ頭とピークが続く.
芋の木ドッケ 将監峠
芋ノ木ドッケ.よく目立つピークであるが、雲取山と並んでいて、奥多摩で主役となることはない.
薄い緑色に染まっているあたりが将監峠の笹原で、南側がなだらかな斜面となっているのは竜喰山.その後ろに飛龍山の稜線がみ えていて、左には三ツ山あたりの小刻みな凹凸が続く.その左背後には雲取山が確認できる.
山ノ神土 将監
山ノ神土.和名倉山に向かう登山道と、唐松尾山と黒エンジュの頭を巻く歩道が分岐していく.
将監峠.
 私は、新地平より雁峠に登り、笠取山、黒槐(えんじゅ)ノ頭、唐松尾山と西から東に向けて多摩川水源部の縦走路を歩くことにした.
 新地平のバス停から雁峠へ登る.行程の大部分はゆるい林道歩きである.新緑のカラマツ林の下を這っていく林道が終わり、沢に寄り添い峠に突き上げる歩道を一登りすると、 雁峠に達した.笹で覆われた峠、そこは静寂の地ではなかった.風もこの峠の上を乗り越えていく.地図を広げれば、強い風によって引きちぎられそうなくらいバタバタと音をたてた. まずは、西にみえている稜線が黒金山から乾徳山に続くものであることを確かめる.
 峠のすぐ東に聳え立つ釣鐘型の山は一目で笠取山とわかる.実際には黒槐ノ頭と並ぶ山域中の小ピークに過ぎないが、稜線は雁峠の切れ落ちているから、こちらから見ると高く、美しい一峰だ. 今日はまずはその笠取山に登ることになる.峠を出発する.林となっていた雁峠小屋のあたりを過ぎると再び笹原に出た.前方に小高くなった場所があって、登ると分水域を示す標柱が置かれてい た.さきほど登ってきた林道は広川に沿っていて、これは笛吹川の支流である.その流れはいずれ富士川のものとなり駿河湾に注いでいる.西に流れた水は富士川の水となる.
 北東に流れ出た水は荒川となる.雁峠はこの広川と滝川ブドウ沢にはさまれた乗越しだ.滝川は入川と合わさり荒川となり秩父盆地を経て関東平野に吐き出されその末は東京の下町から 東京湾に注ぐ.この小さな高台の上の雫、その流れ出す方向が南東であれば、それは多摩川となる.
水源の丘  分水を示す標石は東京都により設置され、他二川と東京の川多摩川がここで分かつことを物語るものだ.古くは玉川上水として江戸の町を潤し、現在は都民の水がめとして作られた奥多摩湖を 支える水源、多摩川.今日では都の水道全体に寄与する多摩川の割合は低くなっているとはいえ、その山域は都の大切な水源林であり、水道局によって管理されている.ここから1Kmほど東、 笠取山の南斜面にある水干という場所は多摩川の水源として水神社が祭られている.
 笠取山は南西の山頂部まで続く防火帯を登ることになる.ここは一気に登ってしまおうと自分に言い聞かせ立ち上がる.いざ防火帯を登りはじめると、背中の荷 の重さが堪える.直登だから10分ほどの辛抱だ.進むたびに後ろに引かれていく感じで、全開の心臓に支えられた体中の血液は次の一歩を踏み出すがために足に向かっていく. いよいよ山頂に近づけば、もう足に力が入らない.ふらふらと倒れこむようにピークに這いあがった.
 期待通り、眺望は見事であった.360度の視界、南には富士山が顔を出している.西には黒金山があり、その背後の国師岳はただ広い三角形の稜線.その左側に見えている南アルプスの 峰々はまだ白いままだった.昼食を済ませ出発する.東に向かう歩道を辿ると、環境庁の設置した標示のある山頂に出た.さらにピークを越えると稜線上の道は遮られていて、右に下る土肌の新しい 道がついていて、水干の分岐に出た.水干は山頂の南直下であるから、ここから少し西に戻らなければならないことになる.この先将監小屋まで今日の行程の残りはまだまだ長い.時間的にロスをし たくないけど、多摩川の水源だけにこのまま見ずに行ってしまうのも惜しい.戻ることにした.
 すぐに分岐に出て黒槐方面と分かれる.黒槐からは将監小屋方面に向かう巻道がある.標高1700mあたりを進む水源巡視道で、稜線を伝うより容易であり時間もかからないようだが、最高峰 唐松尾山まで巻いてしまうので縦走には向かない.分岐の反対は水干で、道が北側によっていくと涸れた沢に出て、岩の上に水神社の碑がある.
   分岐までもどり、黒槐ノ頭方面へ進む.ここに始まる尾根の登りは、午後の汗ばむ時間には意外ときつい登りであった.なだらかなピークに登ると、続いて小さなこぶをいくつも登り降りした.露岩のピーク に登ると、雲取山が見えてきた.
 続いて唐松尾山との鞍部に下る.前に見えている唐松尾山は一段高く、せっかく稼いだ高度を返してしまうのは惜しい感じだ.展望が良いので休憩した後、今日最後の登り、唐松尾山にとりかかった. 先ほどの見えていたのが嘘かのように意外と楽に登れた.最後のいくらか急な部分を駆け登れば山頂に着くが、木々に囲まれて展望はない.左側に三等三角点の標石があり、多摩川水系の最高点に いることを確認して早速下山した.
 緩やかになった道をしばらく下っていくと歩道脇に西御殿岩登り口を示す小さな標示が見つかった.唐松尾山の右手に見えていた尖った2つの瘤の一つのようだ.かなり登り返さないとならなそうだが、 眺望に優れているようだから、ここは寄り道していくことにした.踏み跡を辿ると15分ほどで眺望のすばらしいピークに着く.鳥のさえずりと,時折下の方で木々をなびかせている風の音を聞きながら風景 を存分に楽しむことにした.
 真っ先に目に着くのは和名倉山で、大きな山容、その全貌を間近で見わたすことができる.東側には芋ノ木ドッケと雲取山、その右手に飛龍山が見えている.さらに右手には丹沢あたりも確認できるが 、奥多摩の山々は飛龍山の幅広い山容の陰にちょうど隠れてしまうようだ.南には大菩薩嶺と富士山が見えている.この方角からみる富士の形はよく整っていて、消え始めた残雪を冠していて美しい姿 だった.
Fuji
西御殿岩からの富士.大菩薩嶺の右に均整のとれた三角形をした富士山が見えている.

南アルプス 唐松尾山より
南アルプス 唐松尾山より. 黒エンジュの頭あたりの、小さななコブの上下から開放され鞍部へのくだりに入る.再び、唐松尾山への登りとなって一登りすると、 眺望の良い場所に出る.先ほど見えていた高いピークの姿を思い浮かべるなら、それは意外かもしれないが、ここに達せれば山頂はもうわずかである.ただ山頂にはまったく展望がないの で、ここで休みながら眺望を楽しむ方が良い.
写真では、黒金山から乾徳山へかけての稜線がみえていて、その背後には、南アルプスの白い峰々が並んでいる.乾徳山の後ろにあ るのは幅の広い間ノ岳で、北岳、農取岳とあわせた白峰三山の姿が美しい.
富士山
富士 西御殿岩上から 西御殿岩は、唐松尾山の東に位置する眺望のすばらしいピーク.尾根の縦走道脇に小さな表示があり、 踏跡を20分ほど辿るとピークに出る.雲取山から西の多摩川流域の山々の展望にすぐれ、すぐ隣の和名倉山は、ここに立つとその全域を見渡せる. ここから見える富士は、その形は、美しいことで知られる大菩薩や雁ケ腹摺山のものに近く、天気がよければ必ず立ち寄るべき場所だ.

水源の山々
笠取山 小菅より大菩薩峠に登る歩道が、尾根の上に達すると、まもなくフルコンバ小屋跡に出る.多摩川方面の見通しがよく、水源部の山々の眺望を楽しめる.
笠取山から黒エンジュの頭あたり(乾徳山南林道より)
 黒金山は笛吹川の西に位置し、笠取山とは、深い谷をはさんで対峙している. 黒金山に天科から登る青笹ルートが途中林道に出たところは、破風山から笠取山あたりの展望に優れる.黒金山

奥多摩の写真 笠取山 和名倉山 飛龍山
奥多摩の写真 目次
笠取山 笠取山 和名倉山 和名倉山  竜喰山と飛龍山 竜喰山と飛龍山

縦走第二日 縦走第三日
山旅第二日目は将監小屋から飛龍山を経て雲取山荘.
最終日、雲取小屋から長沢背稜を下山.

雁峠から雲取 地図
Course
所要時間 305分(新地平〜将監小屋)
塩山駅 60分(山梨交通バス)⇒新地平バス停 70分⇒林道を離れる 40分⇒雁峠 15分⇒水源笠取山直下 10分⇒ 笠取山 5分⇒ 巻道分岐 10分⇒水干 50分⇒ 鞍部 30分⇒唐松尾山 15分⇒西御殿岩分岐 10分⇒西御殿岩 10分 ⇒ 分岐にもどる 15分⇒山ノ神土  5分⇒牛王院平 10分⇒将監峠 10分⇒将監小屋
maps
地形図: 雁坂峠 (二万五千分の一地形図).link国土地理院地図閲覧サービス
雁峠を、linkYahoo地図情報でみる.

trans
往路: JR中央線、塩山駅で下車.山梨交通(西沢渓谷行き)、新地平が登口.西沢渓谷まで運行されるのは、観光シーズンの土曜、日曜と特定期間の平日のみ.link山梨交通山岳路線 また、JR中央線山梨駅より山梨市市営バスが運行されている.link山梨市
帰路: 西東京バスでJR青梅線奥多摩駅へ出る.西東京バス
Links
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笠取小屋
笠取小屋
将監小屋
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