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百尋の滝
百尋の滝


雪の川苔谷を訪れる
 土曜の夜、今年に入って2回目の降雪があった.夜が明け日が照り始めると、自宅前の積雪は 消えていたが、山中の川苔谷ならまだ十分残っているだろうと思い、午後になって久しぶりにこの沢を歩いてみることにした.
 奥多摩駅に着くと、乗りなれた日原行きのバスがちょうど停まっていた.さすがに乗客は私以外いなかった.日曜日といっても、冬だからわざわざ寒々しい鍾乳洞を見にいく物好きもいないだろうし、 それにもう午後だ.いまさら山に入る人もいないだろう.川乗橋バス停に着くと、下山してきてバスを待っているグループがいた.季節がいつであろうと、今日のように雪の後であろうと、川苔山に人影 は絶えない.
 出発が遅く時間が限られていたから、林道は歩きとおし歩道に急ぐ.それでも最初の木橋に到達したところで早々引き返す予定時間を迎えてしまった.最初から無理は承知だったのであるが、 雪の百尋の滝を見ずに敗退しなければならないのは少し惜しく思えた.いくら勝手知った川苔谷とはいえ引き返すしかない.午後になって家を出たのはいくらなんでも遅すぎた.
2001年1月 訪問
滝 細倉橋を越えると、林道を離れ、沢沿いの探勝道に入る. 足元は昨晩積もった雪に覆われているけれど、登山者の絶えない川苔山だけに、真新しい踏み後が続いていた.小径が沢よりだいぶ高く離れると、 轟音が聞こえ、下に小さな滝が落ちていた.
 木々に葉がある時期であれば、葉の影に隠れてしまいやっとその存在を確認するだけでとおりすぎてしまいそうな滝だが、今日は雪景色の中、 冷たく静まり返った滝壷にすべり落ちる姿、すべてを見せてくれた.
川苔沢 歩道の橋 川苔沢 雪に覆われた川苔沢.冬季この沢を訪問するには、積雪、結氷を考えて訪問しなければならない.
ice snow
氷結した湧き水.日原川対岸の尾根.



百尋の滝
 奥多摩でよく知られた滝の筆頭は、川苔谷の百尋の滝であろう. 尋は手を広げた幅であって1.8メートルだから、もし本当に百尋あるなら180メートルなければならないが、もちろんそんな落差はなくて、せいぜい 30メートル程度の滝である.それでも奥多摩エリアでは最大規模の滝であるし、水量も豊富で迫力もある.
 それに、滝を見るために適度な山中散策を必要としている点もこの滝の良さなのであろう.払沢の滝のように、運良く車道から近い場所に存在すると、 美しいとはいえ、観光の滝となってしまい、せっかく訪れても自然に触れた感じがしないものである.
 思い起こせば、私の奥多摩とのかかわりもこの滝から始まっているのである.それは東京で暮らすようになった15年近く前のことである. 東京の暮らしに慣れ、少しは自然に触れようと近場の滝を探していたとき、入手したガイドブックで川苔山登山ルートの途中に滝のあることを知った. 奥多摩とよばれる山間地が東京にあることを知ったのも多分この時のことであろう.次の日曜日、電車を乗り継ぎ私は奥多摩駅にはじめて降りた.1000メートルを越える このあたりの山を登るのは、どの程度きついのかまったく見当もつかなかったから、山頂までいくことなど最初から考えもしないで、この滝だけを目当てに散策にきた.
 その後、この滝には、友人達とハイキングに来たこともあるし、休日の午後、ちょっとした散策先として訪問したこともある.本格的に山に登るようになるまでは、 私にとって奥多摩に出かけるといえば、この百尋の滝であったともいえる.
 だいぶ後になって、友人と初めて川苔山に登ることになった.このときにも川乗沢から登りここへも立ち寄った.ちょうど右岸の岩が崩落し立ち入り禁止になっていた時で、 百尋の滝のすぐ下に続いて落ちていた滝は土砂で完全に埋没してしまっていた.今でもその面影はまったくないのは残念だ.
 かつての私がそうであったように、気軽なハイキングの行き先として選ばれることの多い百尋の滝であるが、地図を見れば、その場所はかなり山奥であって、昭和6年に 書かれた田部重治の「東京都下の山と峠」という一文には、入川谷の早滝や布滝は出ていても、この滝は挙げられていない.昭和30年代、林道が整備されたことによって、訪 問者の幅が広がったのかもしれない.
百尋の滝 Hyakuhiro_no_taki 百尋の滝 Hyakuhiro no taki
多分この2点が、私が最初に奥多摩を訪れたときのものであろう.89年6月4日に撮影されている.
林道
新緑に囲まれた百尋の滝(川乗林道より.2008年5月)
滝のインデックス
沢日原川に合流する直前の川苔谷.すでに、このあたりでも谷は狭く、深い.
林道狭い谷に沿ってつけられた林道(登山道入口のある細倉橋付近).
淵のある滝 歩道に入り間もなく現れる滝
沢
長滝長滝
滝長滝の上にある小さな滝.ここで、歩道は右岸に変わる.
沢3つめの橋の上から見た上流側.歩道が沢床に近く、岩面上をすべる 直線の流れは、上を覆う緑のトンネルと合わさり美しい.このあたりが川苔沢探勝の核心部である.
沢4つめの橋から早瀬を見下ろす.橋を渡ると右岸の植林中の登りになり、沢の流れと少し遠くなる.
百尋の滝川苔山登山道と分かれ、はしごを下ると百尋の滝に対面する.



川苔谷 晩秋
紅葉  植林されずにのこされた谷筋の木々は四季の変化を楽しませてくれる. 新緑の季節には、一斉に空を被いはじめた若々しい葉に目をとられ、さまざまな種の木々がそこに存在していること を忘れてしまうのであるが、それがちりゆく晩秋には、それぞれみずからの存在を色彩によって主張し、ひとつひとつ葉は散っていく.
(右)晩秋の川苔谷.
(下)竜王橋から右岸の岩を見上げる.
沢
紅葉


map  百尋の滝は、川苔山への登山道沿いにある. 山頂まで行かなくて、渓谷沿いの歩道だけ歩きこの滝で引き返しても、半日程度の散策で十分な満足感が得られるであろう.沢沿いゆえに訪れるのは新緑から夏のあたりがもっとも良い のは確かであるが、沢沿いの木々の色ずく紅葉の季節も候補だ.もっとも比較的訪れやすい場所にあるだけに、新緑や紅葉の季節、休日はハイカーでこみ合うのが難点になるかもしれない.  冬の沢筋は、木々も葉を落としてしまって寒々しく、滝の水量もぐっと減ってしまって滝を訪問する魅力は減ずる.沢沿いにつけられた散策道は、時に積雪が残り凍結していたりするから、 この季節の訪問には注意が必要だろう.
バス停には川乗という漢字が用いられている. 岩 交通機関は、奥多摩駅から、西東京バス東日原行きに乗って、 川乗橋で下車する.山間路線にもかかわらず、比較的運行本数が確保されている方である.奥多摩駅から、それほど遠くないからタクシーを使ってアプローチすることも可能だろう. 少し前のことで、記憶が正確ではないけれど1000円ちょっとでいけたはずだ.
 バスを降りたら、バス停の横にある林道をたどることになる.車止めゲートの横をすり抜け、美しい沢の流れを見おろしながらの散策をはじめる.めざす百尋の滝までの行程のほぼ 半分がこの川乗林道の歩きとなる.
 沢の流れがやや東に向かっていき、高い植林の林となるとカーブミラーのつけられた大岩の前に出る.この岩の下あたりに聖滝という、高さは低いが美しい滝があるとのこと であるが、私はまだこの滝を見ていない.岩の元から下を覗き込めば瀬音が聴こえてくるし、早瀬らしき流れも少しは見えている.林道がかなり高い所についているから、このあたり では直接沢底に降りることはできないので、少し手前で沢に入り遡行するようだ.そんなことがあって気にはなりつつも、いつもここは通り過ぎてしまう.
 林道は竜王橋で左岸に渡り、次の細倉橋で再び右岸にもどる.林道を歩いていると見落としてしまうが、沢には滝が続いていて水量の多さもあって豪快に流れ下っていく.迫力に おいて、このあたりが川苔沢の核心部だろう.細倉橋を渡ったところが百尋の滝経由で川苔山に向かう登山道の入口である.
 登山道に入ると、まもなく右下に、大きな釜のある低い滝が見える.歩道から切れ落ちていて、青々とした釜を覗きこむのは恐ろしさすら感じられる.この滝のすぐ上で歩道は本流を横 切る.続いて左下に長滝と呼ばれている岩肌の美しい滝が現れる.ここも沢側は切れ落ちていて滝の前に降りることはできない.続いて大きな釜をもつ小さな滝の右脇を登ると橋で対岸に渡り、 支沢を越える.次の橋で左岸にもどったあたりが渓谷探勝の山場で、夏であればあたりの木々の葉の緑のトンネルの下を水が流れ下っていくのは美しいかぎりだ.対岸に渡り、木段を設置した 植林の道を登っていくと平坦な道が続く.沢に下っていき対岸を登るとまもなく百尋の滝の分岐となる.はしごを下っていくと、水しぶきの降り注ぐ沢床に出て、百尋の滝が現れる.
bus stop 曳鉄線
川苔橋バス停は林道の入口バス停の下流側には、日原川をまたぐ曳鉄線がある.
<所要時間の目安>バス停から細倉橋まで45分、そこから百尋の滝まで45分くらい.歩き方によっては、林道部はもう少し時間が短くなるだろうが、百尋の滝までしか いかないのであれば、林道からみる沢も美しいから、ゆっくり探勝していく方がよいと思う.
<地形図> 奥多摩湖、武蔵日原(二万五千分の一)
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