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東日原から植林中の急な登りを登りきるとヨコスズ尾根に出る. |
尾根 |
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日原川の源流部北側に横たわる壁は長沢背稜と呼ばれ、東京都と埼玉県の県境となっている.東日原から北に向かって延びる
ヨコスズ尾根が長沢背稜に合わさる場所のすぐ北には天目山というピークがあって、その南面には一杯水避難小屋が建てられている.
ここから尾根を東に伝っていった先にはと蕎麦粒山という名の1473メートルの山がある.
川苔谷の源頭部ともいえる位置にあるのであるが、谷西側の鳥屋戸尾根ルートの利用は一般的でないので、一杯水を経由して登ることに なってしまう.時間も余分かかるゆえに、標高のわりには行きにくい山域となっているようである. それは幸いにも、比較的静かな山を残すことになっているし、まだ荒れていない歩道も魅力である. ある秋の日曜日、私は一杯水避難小屋までヨコスズ尾根を歩くことにしたのだった.東日原でバスを降り、道標にしたがって、登り始めると 植林中のスイッチバックが続いた.うんざりする急なのぼりを終えれば、紅葉も終えて、天井を失った林中を進む.ヨコスズ尾根は、平坦 できわめて快適だ.時々色をつけたままの残っている葉を見上げ、幾分寒くなった山道を辿る. 一杯水の避難小屋前のベンチには、長沢背稜を歩いてきた人々が、最後の行程、東日原へ向かう前のひとときを楽しんでいる. この日は私は下見が目的だったから、休息を終えて彼らとともにヨコスズ尾根を下ることになった. 年を越し、新年も半月過ぎた16日、今度は友人と再びこの小屋を訪れる.一泊分の荷物と、一杯水はあてにならないから、 必要な飲料水も背負い、東日原の登り始めのスイッチバックはいつになくきつく感じる.3時前に小屋に着いてしまったが、今日はすでに混みあって いる.小屋の一夜は快適だ.目を覚ますと外気は−9度.小屋泊まりは本当にありがたい.体がきつかった風邪による疲労もゆっくり寝れ たからだろうか、完全に治って、身が軽くなったような感じだ. 7時20分、小屋を出発する.蕎麦粒山は、もし日帰りでくるとなると、時間的に厳しいのだけれど、山中で一泊するほどの山でもないので、 今日はのんびりと遊んで帰るだけだ.歩き始めると、水場は予想していたとおり涸れていた.雪はあるけれどこの薄さでは溶かすと泥水になっただろう. ここの水を当てにしなくて、2日分の水を運びこんだのは正解だったようだ.倉沢に下るエスケープルートが分岐していく. 仙元峠下に着いたのは、出発してから1時間ほどすした時であった.峠は小さなピーク上でスズタケの生えた中を藪こぎして登るようにな っている.木立の中に小さな空間が現れ、その片隅には石の祠が置かれていた. 秩父側の峠道は、浦山川の川俣まで続いているという.この峠を通して、かつては日原と秩父浦山には往来があったという. 秩父鉄道には浦山口という駅があるが、浦山川の上流に位置していた集落は、下流部の村とは孤立して僻村であったらしい. 日原から峠を越えたものには、わさびの栽培もあったと大久根茂著「秩父の峠」には書かれている.物資だけでなく、峠は文化も仲介している のである.この本には、5月30日、峠に登り浅間様の祭りが執り行われていたことも述べられている.ゆえに仙元峠という名を得ているのであろう. ここにある祠も、ある翁の記憶によれば、広河原から背負子で担ぎ上げたものであるとのことだ.このあたりに住む炭焼きたちが信心していたという. 峠を跡に、いったん歩道に下り、そのすぐ先で蕎麦粒山のピークに登る道と巻き道がわかれている.それでも、20分ほどかかったことが手帳 に記されていた.遠くからは三角形に見えている蕎麦粒山のピークの登りはそれなりに急なのである.朝、われわれより一足早く小屋を出発して いった一行はすでに先に行ってしまったようで、山頂は静寂の中にある.山頂の岩のもとに腰を下ろし、お茶を沸かしたり、しゃべったりで、2時間ほど ここにとどまることになった. 東側には、日向沢の峰が見えていて、そこに向かって一直線に広い帯が降りていっている.稜線に沿って防火帯として木々が伐採されている のであろう.ここを下っていって、名栗や大丹波に下っていくのもひとつの方法であろうが、先にあるのは、魅力に乏しく感じる山だけだし、それに加えて 長い林道歩きも必要になる. それに、今日は荷物も小屋においてきているのだから、引き返すしか選択はない.まったく同じ道を辿ることもないから、山頂か ら南に向かい、蕎麦粒山のピークを巻くようにつけられている道に出るルートを下っていく.この選択は正解であった.南真正面には、 どっしりと富士山の姿が浮かびあがっていた. 奥多摩には浅間と名のつく場所も多いのは、富士はどこから見ても存在感のある山であるからだろう. |
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