塩見岳は、南アルプス中部域唯一の3000m峰である.この山は、北岳、間ノ岳といった南アルプス北域のピーク群と荒川岳、赤石岳など南域のピーク群の
いずれとも離れている.両域の山々とは、2000m代後半の尾根によってつながっていて、これを縦走していくこともできるが、南北いずれからアプローチしても、コースタイムは1日
を要するゆえに、他の山に登ったついでに塩見岳に立ち寄るのは困難といえる.
よって塩見岳は、単独で長野県伊那谷からアプローチし三伏峠を起点として往復するのが一般的である.大井川西俣と天竜川支流の塩川がつき上げている三伏峠まで、かつて
はこの塩川を辿って登るルートが使われ、JR飯田線伊那大島駅から登山口となる塩川土場までバスも運行されていた.だが、近年はより容易な鳥倉林道経由のルートの人気が
圧倒的となり、この塩川ルートは廃れつつある.
一方の鳥倉林道コースは、2000メートルあたりまで自家用車で入れることから、日帰りで塩見岳を往復するという荒業さえ可能とした.もっとも、登山口から標高差で表せば
1000メートルしかないが、三伏峠から稜線を伝い本谷山を経由した後一端下って、登りなおすことになることから山頂まで6時間以上かかる長丁場である.したがって日帰り往
復は健脚者に限られ、通常は三伏峠まで前日に登っておき小屋で一泊.翌日山頂を往復し下山するスケジュールが用いられる.
2006年から、この鳥倉林道登山口までバスが運行されるようになったため、三伏峠は南アルプス中部域の下山、入山口としてより使いやすくなった.鳥倉口は、おそらく南アル
プス全域中もっとも容易に稜線に達することのできる入口である.バスが運行されたことにより、三伏峠は塩見岳往復の拠点だけでなく、南域と北域をつなげる縦走の中継点と
して機能するようになった.













































